安全で安心なBABYMETALとさくら学院

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BABYMETALの三人はヨーロッパツアーを終えて、7月からのUSツアーに備えて英気を養っているところでしょうか。

ヨーロッパではドイツで予定の曲を全曲演奏できなかったり、YUIMETALの不調が噂されたりといろいろ波乱もあったわけですが、そんななかでもっともメイトたちを騒然とさせたのは、やはりKerrang Awards 2016の授賞式での一件でしょう。

Kerrang Awards 2016でのスピーチ妨害騒動

BABYMETALは2015年の「THE SPIRIT OF INDEPENDENCE AWARD」に引き続き「BEST LIVE BAND」を受賞したわけですが、登壇したSU-METALの受賞スピーチの際、MCをしていたSkindredのヴォーカル、ベンジ・ウェブ氏から強引に茶々を入れられるかたちで妨害されてしまったのでした。

なんとかスピーチを終わらせたSU-METALでしたが、やはり人が話しているのを邪魔するというのは見ていて快いものではありません。ベンジ・ウェブ氏もこの騒動を受けて自身のツイッターで謝罪しています。

ところが、いくつか受賞スピーチの動画を見てみると、このベンジ・ウェブ氏、ノミネート紹介で「KARATE」のビデオが流れたときに一緒に体を動かしていたり、BABYMETALの冒頭のあいさつのときにメロイック・サインをしていたり、そしてスピーチが終わってBABYMETALが退場するときにはメンバーと握手もしているようです。

好意的とも受け取れる行動とスピーチの妨害が混在しているところをみると、いくつかのまとめサイトでも散見されるように、おそらく酒が入っていたことによる悪ふざけでしかなかったと見るのが妥当なようです。

とはいえ、「悪ふざけ」は、ふざけていたつもりでも被った側が傷を負えば、それは立派なハラスメントですよね。

もっとも、その翌日のDownload Festival 2016では雨天のなか圧巻のパフォーマンスを見せたわけですから、おそらく三人にとっては「傷」も小さなものだったと思いたいところです。

ベンジ・ウェブ氏の謝罪ツイートに対するリプライのなかに「IDZ」という単語がありました。「IDZ」の映像を貼ったのもありました。伝わるといいのですが。

冨田真由さん、意識回復のニュース

BABYMETALとは関係のないことですが、同じ時期に、ファンを自称する男性から襲撃され意識不明の重体だったシンガーソングライターの冨田真由さんの意識が回復したというニュースが流れました。

意識回復の冨田真由さん、脳機能に異常なし | 日テレNEWS24 – 東洋経済オンライン

冨田さんが「元アイドル」という経歴の持ち主であることから、この傷害事件はショッキングなものとして連日のように報道されました。2014年に起きたAKB48握手会傷害事件 – Wikipediaを連想された方もいらっしゃるかと思います。

冨田さんがフリーのシンガーソングライターとして活動していてストーカー対策が万全にとれなかった点に関しては、フリーランスであるため事務所などの所属団体の人間に頼ることができなかった、また、ツイッターなどのSNS上の書き込みはストーカー規制法の対象外だった(【元アイドル刺傷】ストーカー規制法はSNS対象外、「警察は対策怠った」と紀藤正樹弁護士 – The Huffington Post)、そして警察は事件が起こってからでしか動けないので実質ボディーガードを雇うしかなかった(しかし一学生の冨田さんにそこまでできるかどうか)、といったところが問題なんだろうと思います。

安全と安心を維持する「約束事」

一方で、握手会といった接触系のイベントをおこなわないさくら学院はこうした問題とは縁のないアイドルの最たるものといえるでしょう。

そもそも、さくら学院のファンは「父兄」と称されます。通常のアイドルが“恋愛”を歌い、握手会で“接触”するのに対して、さくら学院は恋愛を歌わず、接触もなく、「父兄」はメンバーの成長をあたたかく“見守る”存在として機能します。

こういった独自の特徴は「父兄」のあいだでは自明なことだと思います。また、さくら学院に興味を持ち始めている方もすぐに知ることになるはずです。

こういった特徴を、ひとつの強力な「約束事」と呼ぶことができるでしょう。ちょうど、日本で日本人が日本語を使って、日本人らしい振る舞いでコミュニケーションをとるのと同じように、さくら学院の音楽やパフォーマンスを楽しむときは、さくら学院の「約束事」を守りながら楽しんでいるわけです。

そして、さくら学院の部活動としてスタートし、すぅちゃんの卒業以後は課外活動として存続しているBABYMETALにもこの「約束事」は維持され続けています。もっとも顕著なのはプライベートに一切触れないという点でしょうか。

さくら学院においては職員室の先生方が「約束事」を維持しているのと同様に、BABYMETALにおいてはKOBAMETALがその維持の仕事を担っているわけですが、これにメイト側も同じ意識を持つことによって物理的にも精神的にも常にパーソナルスペースが確保され、そのおかげでBABYMETALの三人はプライバシーの心配をせずに済んでいるということがいえるでしょう。

たとえば、この記事(渋谷でBABYMETALの最愛と由結に会った外人3人組 【海外の反応】 – BABYMETALIZE)ではLUCAMETALさんをはじめ海外のメイト(父兄)さんでさえも気遣い、LUCAMETALさんの言葉を借りれば黄金律、をわきまえていることがわかります。つまり「約束事」が海外にまで浸透しているわけですね。

さて、話を戻して、Kerrang Awards 2016でおこった騒動の件、この「約束事」をSkindredのベンジ・ウェブ氏が理解していたらどうなっていたでしょうか。

まあ、そんなわけにはいかないですよね。

いってみれば、ヘイターの存在することや、あるいはBABYMETALに対して飛んでくる批判的なコメントもSU-METAL自らが目を通しているとはいえ、おそらく公の場において、「約束事」を知らない人間と対面コミュニケーション上の「摩擦」がおきてしまった最初のケースだといえるかもしれません。

そして、こういう摩擦は今後もおこらないとは限らないでしょう。摩擦がおきないように(あるいはおきたときにどうすればいいのか)KOBAMETALも尽力しているのだと思いますが、それでもヘイターがいなくなることはないかもしれませんし、三人にふさわしくないような言葉を浴びせられることもあるのかもしれません。

でも、そこはMOAMETALが「この3人なら怖いものはないし、このチームならどこにでもいける」(BABYMETALインタビュー | Special |Billboard JAPAN)と答えているように、なにも怖れず前を向いて、いままでどおり快進撃を続けていってほしいですね。