BABYMETAL「KARATE」でSU-METALに与えられたフェイク

BABYMETALのセカンドアルバム『METAL RESISTANCE』から「KARATE」のMVが3月17日にYouTubeで公開されました。

公開から約4時間ほどで再生回数は10万回を超え、3日後には100万回を超えるという驚異的な伸び方を見せています。

魅かれる点はもちろんいくつもありますが、個人的な驚きは、SU-METALの歌の最後でフェイク的なフレーズが歌われていることでした。

歌詞の最後は「走れ」なのですが、これは音階が「シ・ド・レ」と一音ずつ上がり「レ」で終わっているのですが、歌唱の最後にあたる二度目の「走れ」は「シ・ド・レ」のあとに「ミ・レ」とノートベンドで一音上がり、その後「ド・シ、ラ・ソ」と下がっていくアレンジが施されています。

こういったフレーズが歌われることはこれまでなかったように思います。しいていえば2013年のライブ「LEGEND“1997” SU-METAL聖誕祭」での「紅月」において、強弱をつけたり、一時的な装飾として一音上下させるノートベンドが聴かれるくらいでしょうか。

ちなみにフェイクにおいてNGな点に「音程をはずすこと」が挙げられると思います。フェイクはヴォーカリストが元のメロディーをあえてアレンジして歌うことなので、意地悪な言い方をすると「普通に歌えばいいところをわざわざ崩して腕のよさやセンスのよさを見せつける」テクニックでもあるわけです。わざわざ崩しておきながら音程をはずしてしまっては歌が台無しになってしまいますよね。

もちろん、フェイクがハマれば元のメロディーを歌う以上に引き込まれる鳥肌ものの感動をもたらします。少し前ならホイットニー・ヒューストン、現在ならビヨンセが有名でしょうか。あっ、アリアナ・グランデさんも忘れちゃいけないですね。

ところで、「KARATE」におけるSU-METALのフェイクはおそらくこれで固定されて、今後のライブでもこれ以上にアレンジが加えられることはないかもしれません。(そういう意味では即興的にアレンジを加えていくわけではないので厳密には「フェイク」とはいえないかもしれず、冒頭では「フェイク的」と書きました。)

しかし、SU-METALにこのフェイクが与えられた(あるいは許された)ということは、SU-METALの歌唱力あってこそというのはいうまでもないこととして、ここからさらにSU-METAL、ひいてはシンガー中元すず香のパフォーマンスの幅を劇的に広げるひとつの起点になるということを意味しているともいえるのではないでしょうか。

バリバリにフェイクしまくるすぅちゃんの姿を、これを書きながら思わず想像してしまいました。そういえば「さくら学院SUN」の「キセキの授業」で、すぅちゃんは平安時代の歌人藤原義孝の歌にメロディーをつけて歌っています。そこにフェイク的なセンスを垣間見ることもできるかもしれませんね。