トークに見る最愛ちゃんらしさ
アイドルにはそんなに興味がないので、AKBとかでも顔と名前が一致するのは数名くらいだと思います。
テレビでよく見かけるような、フリフリの衣装だったり、カメラ目線でファンの心理をくすぐるようなフレーズを言ったりというような“いかにも”なアイドルらしさには、個人的にはどうにもなじめないものがあります。
さくら学院は、衣装は学校の制服風だし、ファンに媚びるような言動も見かけません。
そういったある種のアイドルらしさから距離を置いているのがさくら学院です。
けれど、そのなかにいながら、たとえば、アイドルチックな歌唱法だったり、あるいは観客と目を合わせることに意識を置いて実践していたり、そういった点において、ちゃんとアイドルらしさを発揮しているのが最愛ちゃんだったのではないでしょうか。
最愛ちゃんが出演した「LoGiRL さくら学院の放課後!~学んdeマンデー!~」の第6回(2015年3月2日配信)のオープニングトークコーナーで、いかにも最愛ちゃんらしいと思えた箇所がありました。
ちょっと抜き出してみます。
出演は、菊地最愛(日直)、水野由結、磯野莉音、山出愛子の四人です(敬称略)。オープニングの際のフリートークコーナーなので、担任の森先生はまだ登場していません。
ちなみにオープニングトークのテーマは「ハマッていること」でした。
山出「(挙手しながら)はい、はい、はい、はい」
菊地「はい、愛子ちゃん」
山出「なにかしらの画像をたくさん集めること」
菊地「あ、確かに」
山出「気に入った画像は全部ケータイに入れる」
水野「へぇー」
菊地「愛子、すごいんですよ。もうギガバイトがないよね」
山出「そう、そう(笑)……容量いちばん大きいやつなんだけど、もう2.7ギバ、…ガ、ババババ(笑)」
菊地「バババイト」
山出「にいてん、なな、ぎがばいと?」
磯野「うん」
菊地「すごいのかな。すごいんですか?」
水野「わかんないけど」
(中略)
山出「桜の画像とかも、桜の花びらとかの画像あるじゃん」
水野「あー、いいかも」
菊地「わかる、わかる、わかる!」
磯野「莉音もめっちゃある」
水野「由結も」
菊地「桜の画像いいよね!」
水野「いま待ち受けそれだもん」
山出「あとは、好きなものとか、趣味っていうか、好きなモノ? 人? 生き物?」
菊地「食べ物集める人とかいるよね」
水野・磯野・山出「あー、ゆなの!」
山出「ゆなのちゃん、ヤバイ!」
菊地「さくら学院でも食べ物の画像を集めるのが趣味な子がいて、野津友那乃ちゃんっていう子がいるんですけど、その子がすごいんだよね。ちなみにいま田口華ちゃんの待ち受けもパンケーキです」
山出「そうなの?」
菊地「パンケーキなの」
菊地「すごいよね」
山出「知らなかった」
菊地「画像集めるの楽しいですよ」
やりとりのなかの、ある部分を青に色を変えました。
どういう部分を青くしたかというと、これ実は、最愛ちゃんが「カメラに向かって話している箇所」なんです。
最愛ちゃんにとって父兄は5人目のトーク相手
「LoGiRL さくら学院の放課後!~学んdeマンデー!~」のオープニングトークコーナーは、その週に出演するメンバーの登場後に設けられていて、MC役の森先生はオープニングトークのあとに登場します。
ですので、先の場面では四人だけでフリートークがおこなわれています。
この週は最愛ちゃんが日直でしたので、前列で森先生の席のとなりに座り、オープニングトークを仕切っていくのですが、前列に座っているので、どうしても真横を向いたり、後ろを向いて顔が見えなくなることがありながらも、ところどころ体を前に向けて、カメラに向かって話していました。
先に、観客と目を合わせることに意識を置いて実践している、と書きましたが、BABYMETALでは特に知られていますが、三人のなかでもいちばん目を合わせることを意識していますよね。
それと同じことがここでもおこなわれているように思います。そして、目を合わせるだけではなく、カメラの向こうの視聴者(父兄さん)に対して話しかけているわけです。
カメラの向こうから返事が返ってくるはずもないのに「すごいんですか?」と問いかけたり、愛子ちゃんがうまく言えなかった”ギガバイト”を「バババイト」となぞって笑いを父兄と共有しようとしたり、「愛子、すごいんですよ」「野津友那乃ちゃんっていう子がいるんですけど」といったように、メンバーの知られていないところを紹介するようなコメントまであります。ゆなのちゃんの話題にいたっては、カメラの向こうにさくら学院のことをよく知らない人がいるということが前提で話がされています。
つまり、フリートークは四人でおこなわれているものの、最愛ちゃんの頭のなかでは、カメラの向こうの父兄さんが五人目のトーク相手として計算に入っているわけです。
四人のフリートークですから、もしかしたら別に四人の内輪話でもいいのかもしれません。そういうノリの話を聞きたいという父兄さんもいるかもしれない。その「父兄さん」にも古参の父兄さんもいるし、新規の父兄さんもいる。
けれど最愛ちゃんは先に書いたように、カメラの向こうの父兄さんを置いてけぼりにするのではなく、まださくら学院を知って間もない父兄さんにもわかりやすいような優しいトークをしています。
これを15歳のアイドルが生配信にもかかわらずフツーにこなしています。
しかも、BABYMETALもさくら学院も、どちらもメディア露出は多くありません。トークの機会も限られていたかと思います。いったいどこで鍛えられたのか不思議でなりません。
逆にいえば、メディア露出が少ないからこそ、多くの人に知ってほしい、そして、父兄さんに楽しんでほしい、という意識が強くなるのかもしれません。
受け継がれる伝統?
アイドル自体をよく知らないので、いくら僕が「最愛ちゃん、すげー!」と言っても「いや、それアイドルだったらフツーのことだから」といったようなこともあるのかもしれません。
なるべく特別視するような見方はしたくないのですが、とはいっても、他と比較する方法を見つけるのが難しいところです……。
同じさくら学院で最愛ちゃんと同じようなトークができる人って誰かいるかなって考えたときに思い浮かんだのは武藤彩未ちゃんでした。同学年ではトーク委員長を務めていたゆなのちゃんでしょうか。ニセ優等生キャラでしたが、話の最中に「ここはちゃんと話さなきゃ」とでも言いたげに冷静な表情になって父兄さんに語りかける様子をけっこう見かけた印象があります。
在校生では、やはり大賀ちゃんでしょうか。LoGiRLでも率先してトークを引っぱっていますし、おしゃべりのノリでとばしながらも要所要所でカメラに向かって話す場面はよく見受けられると思います。
大賀ちゃんはもう卒業ですが、一年下には黒澤プロという強者がいますし、その下の在校生も先輩から良い部分を受け継いで育っていくんだろうな、なんて思います。
インタビュアーのおねえさんに一対一で向き合うYUIMETALの図。